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モノポールの修行時代。   やってきた27年間。

モノポールが開店して2、3年した時に、お店に修行にやってきた青年がいた。
マダ、夜間高校を行きながらの修行でした。
お家がパン屋さんでお父さんに進められたようでした。

彼は16,7歳でした。
その頃私の息子は8歳と5歳、そこへ大きな息子が来たような存在の青年でした。

お父さんと折り合いが悪く、たんび、タンビもめては、前日の夕食も食べずに学校へ行き、そのままモノポールへ
<修行>の為に通勤していました。

朝から、育ち盛りの彼はお腹を減らして、「奥さん、朝からご飯食べたい!」と素直に言うので、私は張り切って
丼ご飯と餃子などを出したのを覚えています。

開店以来、子供が小さく、一番忙しい時期に、私は、昼過ぎまで働いている人達、4、5人位の昼ご飯・まかないを作っていましたが、
さすが、早朝は仕事が忙しくパンにしてもらっていました。
だから、彼だけは別格でした。

家の揉め事も心に閉まってられないからか、幼い彼は、詳しく話してくれたのでした。

何となく「可愛い子」でした。憎めなくて、変に素直で、大きな問題を抱えているようには思えないぐらい明るく元気な青年でした。

ところがある日、彼は突然店を辞めたのでした。それは突然でした。

お母さんと一緒に家を出たのでした。急な事でしたので、店にもある日、突然・・・と言う感じでした。

急に釜をする子がいなくなり、素人の私がサンドイッチの製造も気にかけながら、主人に怒鳴られながら、<釜>をする羽目になりました。
腕には、昔、島流しの囚人に書かれていたワッカの印の火傷を幾つもつけて、泣きそうになりながら、やり続けました。
ホイロを開けると、「今はあけるな!」と怒鳴り、釜が心配で開けると「今はあける時と違う、温度がさがる」と怒鳴られながら~~~
「火傷したー!」と言うと「そんなもん当たり前や!すぐ、治る」と言われ^^
<よく、乗り越えたなぁ~>と今は思えますが^^^ほんまっ、大変した。

そんな辛い思いでも、達成感もてんこ盛りのお店の季節に店で頑張っていた子は忘れられない子供達でした。
どの子も、それぞれの変わり目には勝手にやってきて「奥さん再婚したでーー」。「奥さん離婚してんーー」。「奥さんに負けんと家買うからな」。「子供できへんねん、どないしよう」。「養子に来てください言われてんけど、国が違うし^^」。・・・と。「リストラされそうや、50歳までは頑張りたいねんけど」。「親父が死んで、お袋が寝たきりや」。「奥さん家買ったでーー」。とか。

考えれば色々な話をしに来てくれたものでした。

郷に帰った子からも手紙を頂いたり・・・でも一番気になる彼だけは何の便りもないまま、26,7年が過ぎていました。

店の前を車で通っているかもしれん、「マダ、やってはる」と思てくれてるかなぁ~とたまに思い出してはいましたが、彼の事は
記憶の彼方にあるままでした。

お昼の休憩時間を、隣の「たこ焼き屋さん」で過ごしていると、「Oです」と小さい声で言う人がいた。お店の前に止めている車が邪魔なのかと思い、「車、邪魔ですか?」と聞き直したほど、彼の声は小さくて聞き取れませんでした。

又「Oです」という。「ちがう、あんたO君と違う。違う、違う。」と私は何度も否定しました。
彼はそのタンビに「Oです」と何度も言いました。

「O君!」「いやっ、O君」・・・私が認識するまで、何度彼は名前を言ったでしょうか?

それからたこ焼き屋さんの御好意で、そこでコーヒーを飲みながら、彼から彼の27年間の空白の話を聞きました。
良い人と結婚して2人の子に恵まれたのが、離婚にいたり、それを悔やんだ10年間。早稲田大学の何とか言う先生の本に出会い
始めて「自分を認める事が出来た事」「自分の育った家庭が機能不全だった事」「親父の生立の愛に餓えた時代の事」全てを整理できて、離婚に対しての自分自身の不甲斐無さを痛感した事。
でも2年前に知りあった女性と再婚して、今は転職も考えている事。

店舗付住宅を買ってから「パン屋、もう一度しよう」と思った事。
今は先にパン屋をして成功している弟の店で修行中だという事。

兄弟は仲が良くて、何よりの話でした。
弟さんは4人も子がいて、幸せな家庭と順調な店を経営していると言う事。

盛りだくさんの話をして
彼は「帰れ!」言われてもしょうがないと思いながらわが店を訊ねてくれた事。

上等な果物を手土産に彼は、すっかり良い大人になり、モノポールにやって来てくれました。

「O君、環境やないねんで、自分自身の受け止め方やからな。自分自身で切り開ける問題やで」と
私は言いました。
「そうです、そこまで気がつくのに、時間がかかり、大きなものを失いました」

「又、来て良いでしょうか?」
「勿論、お父さんに教えてもらえる事は教えてもらい、ウチは息子が二人とも好きな道へ行ったからね」

「僕の日頃の行い次第ですねっ」と彼は笑いながら言いました。

みんなで笑いました。久しぶりに彼の声が店に響きました。

主人も「シュトーレンやれ!伝授するぞ」と言いました。

彼にパン作りにどれほどの情熱があるか分かりませんが、きっと又来るでしょう。

その時は具体的に教えてあげたい事が「山ほど」あります。

楽しいーー<店をしていて私は幸せだなぁ~~>と思いました。


最近若い子がよく、寄ってくれます。人生の話をしに・・・

その子達も含めて、頑張れ!!がんばれ!がんばれの応援隊になりたい。



 
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  小さな庭に咲いたルリマツイ。隣人の塀を越えています。でもお隣さんは花好きな方。
  綺麗ねっと仰ってくれてますので、大丈夫です。


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  伸子の使い方が、今一分からない。
  織り端をみて、足を踏み、ソウコウを糸がきつくならないように糸を引っ掛けないように
  滑らせる,今までに考えた事がない?<経糸密度>も意識しながら・・・車の初心者のとき、
  「バックミラーとサイドミラーを両方見れない」とよく、愚痴りましたが
  それと似ている感じです。慣れる以外ない!!頑張ろう!!


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  こんな風に箱に入れました。リップスのテーブルセンター。贈り物にされるそうです。それもお寺の住職さんです。
  箱の中に糸の材質を書いたカードを入れました。手洗いでお願いしたいので、最初は軽くアイロンもかけてね・・と。

勿論、私のネームタグもいれました。結構喜ばれます。お嫁に行ってしまいます~~大事にされたら嬉しいな~

  手織り 
わた雲  fumi             
                        









by yukiwaa | 2014-09-16 11:17 | お店みせみせ